まだ海草の中でじっとしている・・・・・・ しばらくして、同じ小魚が戻ってきた。 まもなく身体よりも大きなハサミを持ったカニが見えた。
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カニが言ってきた。「今助け出してあげるから動かないでくれ、間違って君の手足を切ってしまうから。」
大きなハサミを高く持ち上げ、海草を一本また一本と切り始めた。
僕は早く切り終わって欲しいと思いながら、じっと動かないように我慢していた。
カニは休まず 次々と切り取っている。全身汗をかいて赤くなっている とても暑そうだ。
心配そうに魚たちも様子を見守っている。
「最後の一本だ。これを切れると抜け出せる。」とカニが言った。しかし残った一本は一番太く、
僕には開いたハサミよりも太く見えた。カニも疲れたように、最後の力を振り絞って切り始めた。
一度では切れず、周りから少しずつ切っていった。
お願いだ急いでくれと思いながら様子を見ていたら 突然カニの動きが止まった。
僕はもうちょとなのにと思いながら「どうしたの・・・?」とカニに声をかけた。
カニが言ってきた「少しだけ休ましてくれないか」と息絶え絶えに行ってきた。
僕は不安だったが、カニも一匹では限界に近い量だった。
僕は「頑張るから少し休んで・・・・」と言ったきり気を失ってしまった。・・・・・・・
周りが騒がしくなり、気がつくと「切れるから起きて」と魚が声をかけてきた。
みんなの歓声と共に最後の海草が切り離された。みんな歓んでいる。
その瞬間、海面に向かってフワッと浮き始めた。手足を動かす力さえ残っていない。
浮力に身を任せるしかない状態だった。 海面までが凄く待ち遠しく感じられた。
海面へ頭が出た。おもいっきり息を吸った。助かった。空気がおいしい。しばらくボーッと波に揺られながら浮いていた。
あっ、カニさんへお礼を言うのを忘れていたと思い出した。潜ってみるとカニの姿は何処にも見当たらない。
魚に「カニさんは」と聞くと 「帰りました。」と言われた。
助けてくれたカニへお礼を言えないまま別れてしまった。
再び海面へ戻ると、上空には 鳥がピィーピィーと鳴きながら、海面近くにいる小魚を
狙って旋回しながら集まっていた。
100メートル先で大きなシャチ数頭が海面から高くジャンプをしている。すごい水飛沫だ!
僕の目の前を横切った巨大な物体の正体がわかった。鯵の大群を追ってきたシャチだった。
鯵を浅瀬へ追い込んでいる。相手の動きを封じ込める生活の知恵だ。
すると海岸から警報が聞こえてきた・・・・・・
第3章 開放 / 第5章 避難 | |
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