プロフィール:
真っすぐ泳げない海ガメ (学名:ツキアオウミガメ)
人間に近い行動パターンと性格をしている。
野原信之助ほどメジャーではない。

生 地
MOON
年 齢
5歳
性 別
オス
血液型
C
身 長
34cm
体 重
程よい重さ
好 物
ラーメン・かき氷

序 章

この物語はある亀の物語である。新しい世界で自由奔放な生活を楽しんでいる。

昔話にウサギとカメ、鶴と亀と語り継がれているが、みんな亀ノ助の兄弟だ。
普段なかなかお目にかかれないカメ。

昔から幼稚園や小学校の庭の片隅で飼われているウサギ。

どちらも先祖は月にいたらしい・・・・・・

 

第1章 旅立ち

ここは見渡す限り砂と石だけの山と海がある。昼は暑く夜は寒くなる。

ウサギとの競争に勝って、もっと早い相手を探していたら、見たことの無い動物に遭遇した。

その動物は二本の足でジャンプするようにスキップをしている。
嬉しいことでもあったかのように身体全体で表現している。ひとりで遊んでいるように見えた。

右手には棒の先に布切れが付いている。 左手には箱のようなものを持っている。
それにこの暑さの中、すごく厚着をしている。

どこかおかしい?

すると急に立ち止まった。持っていた棒を地面に突き刺した。
風にたなびく布には星がたくさんあり 赤と白の横
線も見える。
地球のほうを見ながら両手を力強く掲げガッツポーズをしている。
すると石ころや砂を大事そうに掬い上げ箱の中へ入れている。
食べられもしないものを集めている?

それを岩陰から見ているうちに、友達にしたくなってきた。なんだかこっちまで楽しくなってきた。
でも今 姿を見せたら何をされるか解らない、ここはしばらく様子を覗う事にした。

おばあちゃんが話してくれた昔話の中に、二本足で立ったまま歩く動物のことを思い出した。・・・

日が暮れかかって寒くなってきた時、反対方向へ戻り始めた。箱を重そうに持っている。
変わった奴だ・・・ 理解できない・・・・・

段々遠ざかっていく、一言も交わさずに去って行ってしまう。このままじゃ夢を見ているようだ。
納得がいくまで しばらく後をつけることにした。
競争相手をしてくれるか聞いてみようと思った瞬間、また見た事の無い物が現れた。

どう見ても生き物には見えない。
あれは何だ!
丸みをおびた銀色に輝くものには細い足のようなものが何本も伸びている。
丸い目がいくつもある。
口からは階段状の舌が伸びている。
好物のクラゲかイカのようだ。
よく見るともう一匹いた。
近づいた一匹と何か楽しそうに
話しているようだ。
すると一匹が中へ入った。
残されたほうは、後ろを振り返り
感慨深そうに見渡していた。

物体の中へ入ってしまう このままでは行ってしまう。

自問自答したが勇気を出して付いて行く事にした。急いで駆け寄り足にしがみついた。
まだ気づかれていない。

ドアが閉まった。

中は狭い部屋だった。しかも3匹もいた。
まるでハムスターの寝床のようだ。トンネルはあるし外が見える小さな丸い穴がある、これは目ではなかった。
更に見ていくと居心地の悪そうな感じがしてきた。しかしエアコンが効いていて暖かい。
今晩は砂の中で寝なくて済む・・・・・・

外から戻った一匹が 着ていた厚手の服を脱ぎ始めた。
なかなか愛敬のある顔をしてるじゃないか ・・・

何か話している、様子がおかしい、ひとり言か、いや違う相手が見えないが誰かと話している。
聞きなれない言葉だ、つくしのような物に向かって話している。するとたくさんのメーターが一斉に動き出した。

突然、ものすごい音がしはじめた。振動もすごい。
動き始めた。
こんな経験は初めてだ。
いったい何が起きたんだ。
それに手足が自由に動かせない。
頭も床に張り付いたまま引っ込める事すらできなくなった。
体中で重力を感じ始めた、これが7Gか?

急に不安になってきた。汗も出てきた。やめとけば良かったと後悔し始めた時、 様子が変わった。

静かになった。振動も無い、頭も手も動く、しかし首が痛いまるでムチウチ症のようだ。
すると 何か聞こえてきた音楽だ。 これはイケてる。なかなかいい曲だ。

急に体が軽く感じられた。フワッと浮きはじめた。噂には聞いたがこれが無重力か?
見つかってしまう、急いで目の前のパイプを掴んだ。すると窓から外が見えた。

驚いた!!

TONDERU・・・トンデル・・・とんでる・・・飛んでる・・・
どんどん高くなっていく、このような高さから自分の星を見たのは生まれて初めだ。
離れて見ると美しく見える。
海は黒く山は白く見えてきた。僕がいた”静の海”も見える。

星はますます小さくなっていく、いったいどこへ行くんだ。相変わらずノリの良い曲が聴こえてくる。
そのうち ”2001年宇宙の旅”が聴こえてきた・・・・・・

いつのまにか眠ってしまった。

何時間たったのだろう、目が覚めた。まだ見つからなかったようだ。
外を見ると青く大きな星が窓いっぱいに見えた。
いつも見ていた青い星、こんな近くで見たのは初めてだ。

わくわくして来たと同時に、不安になってきた。
乗り込まなかったら、砂の大海を自由に泳ぎ廻っていたと思うと、ジーンと胸が詰まり ジワーと涙が浮かんできた。

まもなく二日酔いの気分がしてきた。するとあわただしく三匹が話だした。何か確認をしているようだ。

まもなく、シューと音と共に振動がし始めた。
バラバラに分解しそうに衝撃が伝わってきた。
もうオシマイだ。
外はまるで火の海だ。
ギュッと目を閉じ、
「助けてー」と叫んでしまった。
(大気圏突入はマッハ25でないと弾き飛ばされてしまう。)

数秒後、突然静かになった。目を開けてみると周りの様子は変わっていない。

まだ気づかれていない。さらに落ちて行く。墜落だ!! ・・・・・・
またショックがあった。落下速度が急におちた。
今度は何だ!
フワフワと浮いている、外を見ると白い雲が見えた。

雲が切れ始めると、眼下にはコバルトブルーの
海が一面広がっている。

またショックを感じた、いつまで続くんだと思った瞬間、三匹が拍手を始めた。無事、太平洋に着水した。
何処からか「コングラチュレーション」と聴こえてきた。
三匹はお互い手を取り合い 抱き合って喜んでいる。

まもなく ドアが開いた。

上空には羽根をまわしながら下へ風を放っている。これがヘリコプターだ。
するとロープがスルスルと降りてきた。
すると一匹がロープに掴まり釣り上げられた。また一匹と 今だ!! 空かさず足へしがみついた。

しかし散々な目にあった為、力尽きて落ちてしまった。
それを不思議そうに見ていた一匹が手を差し延べキャッチしてくれた。
「カメだ!! カメも月へ行ったのか聞いてないぞ!」・・・・・・

ヘリコプターの中で三匹と始めて話した。
握手を交わし自己紹介をして良い人たちだと思った。

それが人間だった。かの有名なアームストロング船長だった。
人類にとって大きな一歩(1969.7.20)にあわや踏まれそうになって岩陰に隠れたカメ
それ以来、地球で生活することになる。

僕はみんなが知っている月の生まれです。


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